
マイホームの購入を検討している方にとって大きなメリットである「住宅ローン減税」ですが、令和3年度の税制改革によって期間の延長や要件の変更がありました。ここでは、住宅ローン減税に関する知っておきたい情報をまとめてご紹介します。住宅ローン減税はいつまで対象なのか、そして令和4年の改正ポイントも詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
▼ 住宅ローン減税とは?
▼ 住宅ローン減税の適用期間が延長された理由
▼ 令和4年度(2022年)税制改正のポイント
居住開始期間
控除率
借入限度額
控除期間
所得要件、床面積要件、その他変更点
▼ 住宅ローン減税の適用要件
新築
買取再販の場合
中古
リフォーム・増築
▼ 住宅ローン控除の計算方法
▼ 住宅ローン控除の手続きや申請方法
入居1年目
入居2年目以降
▼ まとめ
住宅ローン減税とは?
住宅ローン減税とは、住宅ローンを組んでマイホームを購入した方が受けられる減税制度です。新築や中古物件の購入、さらに増築やリフォームなどをした場合、一定の条件を満たすことで年末のローン残高の0.7%を所得税として最大13年間控除されます。
これまでにも、令和元年の消費税増税や令和2年の新型コロナウイルス流行など、社会情勢や経済状況によって住宅ローン減税は特例延長されてきました。しかし。令和3年度に税制改革が行われたことによって住宅ローン減税の期間が再度延長されました。
本来は2021年までの適用でしたが、4年延長されて2025年まで利用できるように変更されたのです。
住宅ローン減税の適用期間が延長された理由
国土交通省は、令和3年度の住宅ローン減税特例が再延長した理由として以下の2つの要因を挙げています。
・新型コロナウイルスで落ち込んだ経済の回復
・環境性能等の優れた機能性住宅住宅の普及拡大
住宅の購入や投資は、経済回復の下支えに必要不可欠な要素です。経済成長を軌道修正するためにも、住宅ローン減税の期間を延長して住宅需要の落ち込みを回復させたいという政府の意図があるのです。
さらに、国が掲げるSDGs目標の一つであるカーボンニュートラルの実現が大きく関係しています。カーボンニュートラルとは「温室効果ガスの排出量と吸収量を差し引いた合計をゼロにすること」です。 このカーボンニュートラルの実現において、省エネ住宅をはじめとする低炭素住宅の普及が重要とされています。
今回の改正ポイントとして、環境性能に応じた借入限度額の上乗せがあります。この変更点によって低炭素住宅への住み替えを促進したいという政府の狙いもあるのです。
令和4年度(2022年)税制改正のポイント

令和3年度に行われた税制改革では、住宅ローン減税の利用期間の延長だけでなく、その他にも様々な改正ポイントがあります。ここからは、税制改革後の住宅ローン減税の変更要件について詳しく見ていきましょう。
居住開始期間
住宅ローン減税を受けるためには、指定された期間内に購入した住居に入居しなければなりません。税制改革により、2021年末に終了予定だった期間が4年延長されました。
・改正前:2021年末まで
・改正後:2025年末まで
重要なのが、期間内に入居をするということです。購入はしたけれども、その期間内に入居ができない場合は住宅ローン減税の対象とはなりませんので注意してください。
この入居開始期間は、新築住宅、中古住宅、既存住宅に関わらず適用されます。
控除率
住宅ローン減税では、年末時点の住宅ローン残高に控除率をかけて控除額を決定します。今回の改正を受けて控除率は以下のように変更されました。
・改正前:1%
・改正後:0.7%
控除率が下がった大きな理由は、近年の住宅ローンの超低金利化と言われています。低金利となることで住宅ローンの利息を負担するよりも、控除額の方が多くなって得をする方が増えてきてしまったからです。
そうすることで、本来住宅ローンを受けなくても住宅を購入できる方が控除を受けるためにわざわざローンを組むケースが出てきてしまい、本来の住宅ローン控除の目的や趣旨と大きくずれてしまうことが以前から問題視されてきていました。
控除率が下がってしまったことは大きな痛手ではありますが、若干の縮小と考えてください。
借入限度額

改正後の住宅ローン減税の要件では、入居時期や住宅の種類によって借入限度額が細部化されています。
▽新築物件・買取再販の場合
2022〜2023年に入居 | 2024〜2025年に入居 | |
長期優良住宅・低炭素住宅 | 5,000万円 | 4.500万円 |
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 3,500万円 |
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 | 3,000万円 |
その他住宅 | 3,000万円 | 0円 |
環境性能のない一般住宅に2024年以降に入居する場合は、住宅ローン減税は適用外となりますので注意しましょう。ただし、2023年までに新築の建築認定がされている場合は2,000万円の借入限度額となります。
▽既存住宅(中古住宅)の場合
2022〜2025年に入居 | |
長期優良住宅・低炭素住宅 ZEH水準省エネ住宅 省エネ基準適合住宅 |
3,000万円 |
その他住宅 | 2,000万円 |
既存住宅の場合は、入居時期に応じて限度額が変更されるなどの措置はされません。
控除期間
改正前の住宅ローン減税の控除期間は「原則10年」を定められており、一定の条件を満たした場合のみ13年に延長されるとされていました。
今回の改正によって、控除期間は以下のように変更されています。
新築住宅・買取再販の中古住宅 | 13年 |
既存住宅(中古住宅) | 10年 |
新築住宅・買取再販の中古住宅 13年
既存住宅(中古住宅) 10年
新築物件や不動産会社が買い取って再販している買取住宅の場合は、控除期間が13年と長くなります。売主が個人の中古物件を購入した場合の控除期間は10年と短くなりますので注意してください。
しかし、新築住宅や買取再販の住宅であっても入居時期が2024年以降でかつ、所定の省エネ基準を満たしていない住宅に入居する場合は、控除期間が10年となるので注意が必要です。
所得要件、床面積要件、その他変更点
それ以外にも所得要件や床面積要件なども変更されています。
所得要件の引き下げ
住宅ローン減税は所得制限が設けられていますが、改正前後では以下のように要件が引き下げられました。
・改正前:所得の合計金額が3,000万円以下
・改正後:所得の合計金額が2,000万円以下
所得要件が引き下がったことによって、より多くの人たちが住宅ローン減税の恩恵を受けられるように変更されたのです。
床面積要件の変更
住宅ローン減税を受けるためには、一定の床面積の住宅であることが条件でした。しかし、改正後は以下のように要件が変更されています。
・改正前:50㎡以上(特例措置では40㎡以上の場合もあり)
・改正後:原則50㎡以上
改正後も50㎡以上の物件が対象であることは変わりありませんが、2023年以前に建築確認を受けており、購入する方の合計所得が1,000万円以下の場合は。床面積が40㎡以上の住宅から控除の対象となります。
築年数要件の撤廃
住宅ローン減税の改定後は、物件の築年数に関する要件も以下のように変更されました。
マンションなどの耐火建築物 | 木造住宅などの非耐火建築物 | |
改正前 | 築25年以内 | 築20年以内 |
改正後 | 築年数に関わらず、昭和57年以降に建築された新耐震基準を満たしている物件 | 築年数に関わらず、昭和57年以降に建築された新耐震基準を満たしている物件 |
昭和57年に施行された建築基準法を満たした物件であれば、住宅ローン減税の対象となりますので、物件の選択肢がより広がります。
住宅ローン減税の適用要件
住宅ローン減税の適用要件は、新築物件や中古物件、さらにリフォームや増築などによって大きく異なります。ここからは、それぞれの物件に対する適用要件を詳しくご紹介します。
新築
新築物件を購入時の住宅ローン減税適用要件は次の通りです。
・減税を受けようとする本人が、住宅の引き渡し日や工事完了から半年以内に入居すること
・特別控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以内であること
・対象となる床面積が50㎡以上で、かつ床面積の50%以上が自身の入居スペースであること
※ただし、合計所得金額が1,000万以下で、2023年までに建築確認を受けた場合は40㎡以上でもOK
・住宅ローン減税の対象となる住宅に対して10年以上のローンが組まれていること
・居住用とした年と、その前後の2年を含めた合計5年間で、居住用財産の譲渡による長期譲渡所得の課税の特例を受けていないこと
売買契約書と登記簿上では床面積が異なる場合があります。基本的に床面積は登記簿上の数字を元に判断されるため、住宅ローン減税を受ける際は注意してください。
買取再販の場合
不動産会社が中古物件を買い取ってリフォームした物件である「買取物件」は新築物件の適応条件に加えて、以下の要件を満たす必要があります。
・宅地建物取引業者から住宅を購入していること
・宅地建物取引業者が住宅を取得してリフォームを行い、販売までの期間が2年以内であること
・取得時点で新築日新築日から10年以上経過している物件であること
・建物価格に対して、リフォーム費用が20%以上であること
・耐震基準に適合する工事や大規模修繕、バリアフリー修繕工事や省エネ改修などの対象となる工事が実施されていること
買取再販の住宅で住宅ローン減税を受けるためには、リフォーム費用や改修内容などが細かく決められています。確実に住宅ローン減税を受けるためには、購入前に販売業者に減税対象の住宅であるかをしっかりと確認しておいてください。
中古
中古物件を購入する場合は、新築物件の適用条件を満たすだけでなく、以下の要件を満たさなければなりません。
・新耐震基準に適合している住宅であること
今回の改正によって、築年数による縛りがなくなり、新たに新耐震基準に対する要件が追加されました。年数に関する要件が廃止されることによって、より多くの中古住宅を購入する方たちに対して住宅ローン減税が適用されるよう変更されたのです。
リフォーム・増築
リフォームや増築をする場合も、ある一定の条件をクリアすることで住宅ローン減税が適用されます。新築での適応条件にプラスして、以下の要件を満たす必要があります。
・自己所有物件であり、所有者自身が入居する物件のリフォームや増築工事を行うこと
・工事の費用総額が100万円以上であること
上記の要件を満たしていて、なおかつこれからご紹介する要件のどれか一つに当てはまれば、住宅ローン控除が適応となります。
・増改築や建築基準法が定める大規模な修繕や大規模な模様替えの工事であること(壁や柱、床、はり、屋根、階段の工事)
・集合住宅や分譲物件の専有部分の床、階段、壁の過半について行う一定の修繕や模様替えの工事であること
・集合住宅や分譲物件の専有部分のうち、リビング、キッチン、浴室、トイレ、洗面所、納戸、玄関、もしくは廊下の床、壁全体に対して行う修繕や模様替えの工事であること
・現行の耐震基準を満たすための耐震改修工事であること
・一定のバリアフリー改修工事であること
・一定の省エネ改修工事であること
このように、リフォームや増築などの住宅ローン減税の適応条件はとても複雑です。新築物件や中古物件を購入する場合と比べて、注意すべき項目がたくさんあります。1つの工事に要した金額で算出されるため、時期を分けて改修工事が行われる場合は注意が必要です。
ご自宅のリフォームを検討されている方は、なるべく早い段階で専門家に相談をして住宅ローンの適応となるかどうかを確認しておきましょう。
住宅ローン控除の計算方法
住宅ローン控除額の計算方法は、居住年数によって異なります。改正後の控除率は1%から0.7%に引き下げられているので計算する際は注意してください。
居住年数 | 計算式 |
1〜10年目 (上限40万円) |
年末時点の住宅ローン残高または取得対価×控除率0.7% |
11〜13年目 (1.2.の少ない方が適応) |
1.年末時点の住宅ローン残高×控除率0.7% 2. (住宅取得等対価の額-消費税額)×2%÷3 |
居住年数 計算式
1〜10年目
(上限40万円) 年末時点の住宅ローン残高または取得対価×控除率0.7%
11〜13年目
(1.2.の少ない方が適応)
1. 年末時点の住宅ローン残高×控除率0.7%
2. (住宅取得等対価の額-消費税額)×2%÷3
住宅ローン控除の手続きや申請方法
ここからは住宅ローンの控除を受けるための手続きや申請方法についてご紹介します。入居1年目と2年目以降では手続き方法が異なりますので注意が必要です。
入居1年目
入居1年目は確定申告が必要です。そのため、初年度の申請は、入居した翌年の2月中旬から3月中旬に行いましょう。確定申告時に必要な書類は次の通りです。
・住宅ローン控除申請書
・確定申告書A
・住宅借入金等特別控除額の計算明細書
・住宅ローンの借入残高証明書
・勤務先の源泉徴収票
・建物・土地の登記事項証明書
・建物・土地の建築請負契約書または不動産売買契約書のコピー
・マイナンバーカードや運転免許証などの本人確認書類
・耐震基準を満たす中古物件の場合は耐震基準適合証明書または住宅性能評価書のコピー
・認定長期優良住宅や認定低炭素住宅に関する認定通知書のコピー
これらの書類は、税務署や金融機関、不動産会社や法務局で入手できます。指定の用紙をもとに、ご自身で記入して書類を作成してください。
入居2年目以降
住宅ローン控除の手続きは、毎年行う必要がありますが、入居2年目以降は通常確定申告を行う必要はありません。勤務先で年末調整の手続きを行うことで控除が受けられます。税務署から届く書類や銀行の残高証明などの必要書類を勤務先に提出してください。
フリーランスや自営業の方は、1年目と同様に確定申告時に住宅ローン控除の申請を行います。確定申告時に必要な書類を税務署に提出しましょう。
まとめ
令和3年度の税制改革によって、住宅ローン控除は4年間延長されました。ただし、適用期間は延長されましたが。細かな要件が変更されています。住宅ローン減税の対象となる物件はもちろんのこと、借入限度額なども様々な条件が設定されているため注意が必要です。住宅の購入やリフォームを検討されている方は、ご紹介した内容を参考にしながら控除の恩恵を最大限受けていきましょう。